事業を運営するうえで、景気の悪化や産業構造の変化などの影響を受け、事業の縮小や、従業員の解雇を余儀なくされることもあるでしょう。そのような状況を避けるために活用したいのが、雇用調整補助金です。
雇用調整助成金は、事業主側の経済上の理由から、従業員が解雇されてしまう事態を避け、雇用を維持させることを目的とした助成金です。事業者が従業員に対して、一時的な休業、出向、教育訓練などの雇用調整を実施し、労働者の雇用を維持した場合に、その雇用調整に要した費用の一部を国から助成してもらえます。
雇用調整助成金は雇用維持を目的とした事業主への支援
労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由により労働者を休業させた場合、使用者は、その休業期間中、平均賃金の百分の六十以上の休業手当を支払わなければならない」としています。
つまり、使用者(事業主)には、使用者側の問題で従業員を休業させた場合は、平均賃金の60%以上の手当てを支払う義務があります。「使用者の責に帰すべき事由」には、景気悪化だけでなく、天災事変などの不可抗力など幅広い事由が該当します。
このようなやむを得ない事情を抱える事業主が、従業員を解雇するのではなく、休業等の措置を取り雇用を維持させるために支給されるのが雇用調整補助金です。雇用調整助成金は、雇用の維持を目的とした、事業主に対する支援ということです。
受給対象となる事業主とは
以下に挙げる要件にすべて該当する事業主は、雇用調整補助金の受給対象となります。
受給要件
- 雇用保険適用事業所の事業主である
- 事業活動を示す指標(売上高または生産量など)の直近3か月間の月平均値が、前年同期と比較し10%以上減少している
- 従業員(雇用保険被保険者、受け入れている派遣労働者)の雇用量について、直近3か月間の月平均値が前年同期と比較して、以下の人数以上増加していない
- 中小企業の場合…10%を超えてかつ4人以上
- 中小企業以外の場合…5%を超えてかつ6人以上
- 休業、出向、教育訓練などの雇用調整が、一定の基準を満たしている
ただし、これらの要件については情勢に合わせた緩和措置が取られる場合や、その他の要件が設定されている場合もあります。申請の際は厚生労働省が公示する最新情報をご確認ください。
支給される時期
雇用調整助成金の申請先は、各都道府県の労働局です。雇用調整助成金の申請ができるのは、休業中の賃金や休業手当を支払った後となります。雇用調整助成金の内容や、休業手当の対象従業員数など、さまざまな事情により支給までの期間が異なる場合もありますが、平常時は、審査通過後2か月程度で支給されます。
不正受給への対応は厳格化されています
支給申請書に故意に虚偽の記載をしたり、偽りの証明を行ったりすると、不正受給として厳しいペナルティを受けることになります。
不正受給のペナルティ
- 「不正発生日を含む判定基礎期間以降の金額」+「違約金(不正受給額の20%相当額)」+「年3%の延滞金」の合計額の返還請求
- 不正受給日から5年間、不正受給した助成金だけでなく、すべての雇用関係助成金が受給できない(返還請求額が全額返納されていない場合は期間が延長される)
- 重大または悪質と判断された場合は、事業所名や代表者名などを公表 など
不正受給への対応は厳格化されており、「刑法第246条の詐欺罪」等に問われる可能性もあります。労働局では積極的な調査を行っていますので、申請内容が疑われることのないよう、申請の際は慎重に行いましょう。